百科全書について
「web2.0」と一括して総称されている動きに関して、昨年来の礼賛の本に加え、批判的な本が書店で目立つようになったと感じている。
手に取って読んだ本は、「小山 雄二著 Googleが消える日」・「アンドリュー・キーン著 グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか?」・「ピエール・アスリーヌほか著 ウィキペディア革命」などだが(「ジャン‐ノエル・ジャンヌネー著 Googleとの闘い」は、読了していない)、「集合知」と一世紀にわたって獲得してきた、「著作権」をはじめとする従来の権利とが、対立しているようにも読める(とりわけアンドリュー・キーンの本には、その危機感が強い)。
web2.0と呼ばれている動きを、安易にあるいは無条件に礼賛しようと、私は思わない。また、ことさらに批判的になろうとも(なれるとも)思っていない。
百科事典に関して、「書物」という形態がふさわしくないということは、かなり前から考えてきた。かりに、百科事典が「巻物」であったとしたら、私たちは、使うたびに途方にくれたであろう。
知識を細分化し、必要なものだけを必要なときに取出すには、「書物」という形態は、向いていない。
しかしその事だけであれば、百科事典が、CDやDVDとなったり、web上に置かれたりした時点で、解決済みである。
ウィキペディアに対する批判は、誤情報・悪意ある書き込み、あるいは記述自体が固定せず「フロー」の中にあることなどが、上記の本の中で多々書かれているが、とりわけヨーロッパ・フランスでは、その体系性のなさに苛立っているように感じられる。
「ダランベールとディドロの百科全書の基礎にあるコンセプトとウィキペディアのそれとはまったく違っています」。「ウィキペディアは絶えず書きこみが加えられる進行形の作品で、それが長所であり短所となっていますが、ディドロの百科全書の基礎は知識の体系化です。それは百科全書の趣意書で特に説明されています」。
『ウィキペディア革命」』p81~82
「五〇年以上も仏語辞典ロベールの編集に携わってきた語彙学者で歴史学者のアラン・レイ」(p80)は、指摘する。
手元に「百科全書趣意書」はないのだが、たしかにダランベールは「百科全書序論」の中で、「百科全書として、人間の知識の秩序と連関を可能な限り明らかにすべきこと」(世界の名著35 p420)と記している。
また、すでにベンヤミンにふれながら、この問題はこのブログでも考えてきた。
今、私たちが目にしているのは、「体系化」しない知識である。ここに問題の核心があるように思える。
すべての「体系」は、目の中のうろこのようなものだ、と構造主義やポストモダンの思想のように語ることはできる。
また、
という批判も、考えなくてはならい。
ただ、事実としてその流れが続いていて、これからも続くだろうということには、自覚的であろうと思う。
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グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか?―Web2.0によって世界を狂わすシリコンバレーのユートピアンたち
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