2008-01-01から1年間の記事一覧

「多くの書を作れば際限がない」 伝道の書

アルベルト・マングェルの本は、『世界文学にみる架空地名大事典』にしても、『読書の歴史─あるいは読書の歴史─』しても、読む者を(少なくとも私を)幸福な気持ちにしてくれる。 ある人々はペダンチックと言うかもしれないが、その博識には圧倒され、「読む…

無聊について

私は基本的に時間に対してとてもケチなのです。ですから、時間を投資したものについては、何らかの形で回収しようとします。本についても同じで、「読み終わっておしまい」では、本代も時間も、もったいないと思うのです。 勝間和代 『読書進化論」』p21 勝…

百科全書について

「web2.0」と一括して総称されている動きに関して、昨年来の礼賛の本に加え、批判的な本が書店で目立つようになったと感じている。 手に取って読んだ本は、「小山 雄二著 Googleが消える日」・「アンドリュー・キーン著 グーグルとウィキペディアとYouTubeに…

艶本江戸文学史

前回「出版されなかったにせよ、ある程度のものが江戸期に、自筆本・写本の形で私蔵されきた証左であろう。」と書いた。 不明を恥じるばかりであるが、林美一の「艶本江戸文学史」を読んで、夥しい数のポルノグラフィが、江戸期を通じて版行されていることを…

江戸の禁書目録

今田洋三「江戸の禁書」の中に、明和八年の禁書目録が掲載されている。 これは、京都の書物屋仲間がまとめたもので、今田はその背景について以下のようにまとめている。 出版界では江戸根生いの書物屋が急速に力を伸ばしていた。それに圧倒されて、元禄以来…

禁書目録

ポルノグラフィの専門家のだれでもが―――そしてその後継者の多くが―――近代的なポルノグラフィの祖とするのは、一六世紀のイタリアのピエトロ・アレティーノである。 『ポルノグラフィの発明』p22 『ポルノグラフィの発明』の編者であるリン・ハントは、そう書…

20年を経て

先日、必要があって「リクルート事件」の記事を読むために、朝日新聞の縮刷版を繰っていた。 1989年2月13日の月曜、江副逮捕の記事を探している時、その前日の日曜の読書欄に目が止まった。 まず「パソコンで『本の情報』速く広く」という記事。 初期のパソ…

円本と新聞宣伝

「出版と社会」は、大部の書である。触れられる「昭和出版史」のエピソードは、それぞれ興味深いにせよ、読み上げるのに相当な時間を要した。 まず、私は、著者が「序 出版のパラダイム」で述べている「出版現象の成層構造」などの所論に与しない。 本書30P…

寛政の改革

寛政三年、山東京伝・蔦屋重三郎は、幕府から処罰される。京伝著の洒落本三部作『錦之裏』『仕懸文庫』『娼妓絹籭』が処罰の対象で、京伝は手鎖五十日、板元の蔦屋重三郎は身上半減になった。 寛政の改革は、この「筆禍」によって、勃興し始めた江戸の町人文…